この記事では、ロルフィングの基本的な受け方である10シリーズの説明②として、ロルフィング10シリーズのうち、4〜7回目の深層セッションについて書いています。10シリーズのうちで最も重要といっても過言ではないこのセッションは、身体の内側にアプローチしていきます。身体の内側と外側のバランスが崩れている人がとても多く、そして見落とされてきている観点であることを認識していた創始者のアイダロルフ博士は、このセッションの重要性を数多く述べていました。その内容をご覧ください。
2. 深層(コア)セッション
前回のブログで、10シリーズの大まかな内容と、1〜3回目までのセッション内容について説明していきました。アイダロルフ博士が何度も言っていますが、「身体の内側と外側のバランスを取ることが大切である」「骨盤の水平化を目指す」ことがとても大事で、この10シリーズにはそのエッセンスが組み込まれています。1〜3回目の表層のセッションでまずは身体の外側を開き、4〜7回目の深層のセッションでいよいよ身体の内側を開いていきます。今回はそのコアセッションの紹介です。
この深層セッションはとても重要です。この4回のセッションのために、表層の3回のセッションがあり、8〜10回目のセッションが存在すると言っても過言ではありません。この深層=コアが開いていくことで、身体がより動きやすくなり、実際に姿勢や身体が大きく変化することを何度も見てきました。姿勢が変わると、見た目はもちろん身体の動き方も変わってくるので、身体に対する影響はとても大きいのです。
セッション4
第4セッションは、内転筋の開放が大きなテーマになります。内転筋の役割はその名の通り、足を内側に持っていく(内転する)ことなのですが、骨盤を下から支える役割もあります。この骨盤の位置を決めているのは、周りの筋肉による引っ張り合いのバランスです。その中でも大きな割合を占めるのが、セッション4で扱う内転筋なのです。下図の骨盤についている筋肉が全て内転筋(群)なのですが、これだけ大きな質量を占める筋肉群に左右差があったり硬さがあったりすると、骨盤が水平ではなくなってしまいますね。
アイダロルフ博士から直接ロルフィングを習い、ロルフィングの教科書を書いているエド・モーピン博士からよく言われていたのが、「膝が骨盤から自由に動くようにしてあげなさい」ということ。この内転筋が詰まったり硬くなったりしていると、膝が常に骨盤に引っ張られている状態になります。つまり、脚が伸びていけない状態になるのですね。そうすると、歩いたり走ったりといった、足を振り出す動作がやりにくくなってしまいます。そうならないように、セッション4において内転筋を開放していくのです。
セッション5
第4セッションで膝が骨盤から自由に動くようになりました。その次に、第5セッションでは腰椎のバランスを取っていきます。腰椎は、お腹の高さにある背骨のことを指します。下図の1、2、5番のように腰椎が前に行き過ぎていることで腰が反ったり、4番のように腰が平らになったり、と腰椎の状態が骨盤の傾きや位置関係に大きな影響を与えています。この腰椎のバランスが取れると、3番のように骨盤が水平になりやすく、姿勢が整うのです。そのためにアプローチする大事な組織が、腸腰筋(大腰筋と腸骨筋)です。
腸腰筋は、大腿骨から腰椎にまでついている大腰筋と、大腿骨から骨盤の内側の縁についている腸骨筋の総称です。この腸腰筋が開放されることで、腰椎と骨盤が自由に動けるようになり、姿勢が伸びたり自由な動きができたりするようになります。また、腸腰筋は横隔膜にも筋膜を通じて付着しているので、この筋肉を開放することで呼吸にも影響が出るでしょう。このワークを受けた後の身体は、言葉では言い表せない感覚になります。
セッション6
第4セッションでは膝と骨盤、第5セッションでは骨盤と腰椎と、二箇所のバランスや関係性を見ていきました。その次に必要なのは、骨盤自体が水平化されていくことです。そのために、第6セッションでは、骨盤の後ろ側にアプローチしていきます。骨盤の後ろには大臀筋という大きなお尻の筋肉がありますが、その下にある筋肉もとても重要です。その大臀筋を取り除いた図がこちらです。
骨盤が水平になるためには、これらの筋肉のバランスが取られている必要があります。その内の一つ、梨状筋という筋肉は仙骨に付着しています。この梨状筋は腸腰筋と特別な関係性にあり、どちらもアプローチされるべきものになります。仙骨の延長上に背骨があり、腸腰筋の状態が変化して腰椎の位置やバランスが変わることで、仙骨を取り巻く状態=梨状筋にも影響が出るからでしょう。 また、下記のように梨状筋の近くには神経が通っていて、足の痺れなどの症状がある坐骨神経痛はこの筋肉の張りなどによって引き起こされることが多いです。腰椎のヘルニアと合併して症状が出ている方が多いですが、第5、6セッションを経験していく中で気づいたら症状がなくなっている人を何人も見かけます。
セッション7
仙骨は脊柱の1番下の部分になるわけですが、そこが開放されたら逆側の、一番上の部分も開放してあげなくてはいけません。そのために、セッション7では頭部と首に着目していきます。エドモーピン博士の表現を借りると、「首を体幹の上に、そして頭を首の上に乗せていく」ことがゴールになります。下から、体幹、首、頭、が綺麗に乗っている状態を目指していくのですね。この状態ができると、頑張ることなく首が勝手に上方向に伸びていくのが、私たち人間の身体に元々備わっているメカニズムになっています。
この図中の英文には、「首が自由になることで頭が前に、そして上に引き上げられる」と書かれています。頭の重さが前に行くと地面方向に重さの力が向かい、足まで下ります。そして、セッション6までを通じて身体が綺麗に整っていると、頭の重さの力が地面から上まで跳ね返り、さらに首回りが自由になっていると頭までもが上に伸ばされていくのです。筋肉を力を使って伸びているわけではなく、身体の仕組みは本来そうなっているのです。
その首回りが自由であるためには、首の前と後ろの筋肉群が開放されている必要があります。首には何層も筋肉が付いているので、外側の大きなものから内側の深い小さな筋肉まで丁寧にアプローチしていきます。
また、顎周りの筋肉も動きやすくなっている必要があります。この図を見てもらうとわかるように、顎には外側からだけでなく内側にも筋肉がたくさん付いています。この顎周りの力が抜けていることで頭が自然と前に行けるようになるので、顎周りを開放していきます。顎関節症などの症状がこのセッションを通じて解消されている人もいるでしょう。
これまで、4〜7回目までのセッションの内容を見ていきました。この4回はとてもパワフルなセッションで、初めての感覚を得る方が非常に多いです。その感覚を日常の中で経験していくことで、次のステップに向かうことができます。それが、最後の統合のプロセスです。次回はそちらについて書いていきます。