脊柱メカニクスの解説①

この記事では脊柱のメカニクスについて説明しています。脊柱(背骨)は身体の姿勢を支えてくれる大事な骨組みであり、複雑なメカニクス(仕組み)の元に成り立っています。この脊柱のメカニクスを理解することは身体を改善していく上でとても大事ですので、4回に渡って内容を要約・解説しています。今回は第一回です。

目次

はじめに

先日、ロルフィングを学び始めたボルダー時代に購入したJeffery Maitland著の、「Spinal Manipulation Made Simple ~A Manual of Soft Tissue Techniques~」をようやく読み終えました。必要なチャプターは今まで適宜読んできましたが、隅から隅まで全部読んだのは今回が初めてでした。今まで理解が浅かったところが改めて分かり、深く掘り下げる重要性を痛感しているところです。

この理解が深まったことで、今までセッションをしているときに解決できなかった問題や症状が改善されるケースがとても多くなりました。また、ロルフィングとソースポイントに並行して最近活用しているIMAC(詳しくはこちら)においても、こちらの考え方は取り入れられるようですので、IMACを勉強している方 には復習にもなってオススメです。内容と本の値段を比べてみるとコスパはとても良いのでお買い得です。

多くのボディワーカー、治療家も脊柱のメカニクスについては勉強されていると思いますが、複雑な部分の細かい解説がもう少し欲しいよ…と感じている方もいるのでは思い、一部分ですが自分なりに脊柱メカニクスの基礎を解説してみました。

1.フライエットの法則

この本は、具体例を用いながらの説明がとても丁寧にされています。特に序盤において、フライエットの法則として知られている脊柱のメカニクス、つまり脊柱がどのように動くのか?ということについて反復して書いてくれているので、理解がとても深まりました。フライエットの法則は第3法則まであるのですが、この本では第2法則まで記されていました。本を引用すると、

触診を経て学んだ、胸椎と腰椎に関する重要な事実が二つあります。

⑴、中立位では側屈と回旋は常に反対側で起きる

⑵、前屈や後屈などでの非中立位では、側屈と回旋は同側で起きる

引用元:Spinal Manipulation Made Simple ~A Manual of Soft Tissue Techniques

となっています。つまり、胸椎と腰椎においては、⑴脊柱がまっすぐであると、例えば右に側屈したら左に回旋する、ということです。また、⑵脊柱が前に曲がっているとき、もしくは後ろに反っている場合に、右に側屈したら右に回旋する、ということです。

この最初の動き、⑴をTYPE1モーションと呼び、⑵をTYPE2モーションと呼びます。これが正常な動き方で、上記の二つの正常な動きができない状態を「機能不全」と呼んでいます。この機能不全の状態からどのように脱していくか、ということにこの本は重きを置いています。

2.機能不全の分類

そのためには、まず機能不全の理解が不可欠です。機能不全は、「何かしらの制限もしくは脊椎間の関節(=椎間関節)が固定化されている」とこの本では説明されています。言い換えると、「機能不全=制限によって関節が動くことができない状態」ということです。ここでの機能不全には2パターンあり、TYPE1機能不全とTYPE2機能不全があります。

TYPE1機能不全は、側屈と回旋が反対向きに起きる一方で、前屈位や後屈位で、そして中立位でも側屈と回旋が常に起きている状態を指します。また、複数の脊椎を伴った回旋であるのも特徴です。下図のような状態で、胸椎部では左に側屈しながら右に回旋しているのが分かりますね。この状態の代表例が側湾症です。

出典:Spinal Manipulation Made Simple ~A Manual of Soft Tissue Techniques

 

また、TYPE2の機能不全は、いわゆるギックリ腰などの際に発生します。たとえば、ある人が何かを拾おうとした時に、前かがみになりながら少し身体を捻ったとします。捻ると、椎間関節では回旋と側屈が同時に起きて、前屈位だとTYPE2の動きが適応されるので、同じ方向に、たとえば右に少し捻ったら右にも少し側屈するということですね。そこまではいいのですが、もしその回旋のスピードが少し速かったり角度が正常範囲を越えたりしてしまうと、身体が危険を感じて筋肉がけいれんし、椎間関節間が固定化されてしまいます。その結果、椎間関節に制限が生まれ、中立位に戻ってもその制限が残ったままになるのです。

出典:Spinal Manipulation Made Simple ~A Manual of Soft Tissue Techniques

上記の二例をまとめると、このようになります。

  • TYPE1機能不全=回旋と側屈が反対の方向に起きている状態。複数、グループで起きる。(前屈や後屈をしても回旋は変化せず、中立位でも残ったまま。)
  • TYPE2機能不全=中立位で、回旋と側屈が同じ方向に起きている状態。通常、単独の脊椎で起きる。(前屈や後屈により、回旋は増えたりなくなったりする。)

ここまででも本当に情報量が多くなってしまったので、次回のブログに「制限の見つけ方」の内容を書いていきます。この内容こそが、脊椎のメカニクスでのメインディッシュです。

次回ブログはこちらです。

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この記事を書いた人

日本語と英語を操るバイリンガルロルファー。東京出身ではありますが、神戸の風土と文化、そして人の雰囲気に親しみを感じ、2016年に移住してきました。六甲山を始めとした山々と海の自然に囲まれ、お洒落なお店が立ち並ぶ神戸三宮での日常を楽しんでいます。

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